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念願の「致知」に掲載されました!

20年以上定期購読している「致知」に花谷先生の記事が掲載されました。「マスク病から身を守る」~コロナストレスを解きほぐそう~

  

花谷先生が購読し始めたのが30代前半、それから毎月定期購読し、お弟子も毎月回し読みをしながら「人間学」を学びました。世の先達は何をどう考え、若い時にどう過ごしたのか?当時から治療院の待合室にも置いていた唯一の雑誌です。

<原稿>

『致知』四月号

連載・第230回

「大自然と体心」

 

マスク病から身を守る

コロナ禍のストレスを解きほぐそう

 

バランス整骨院総院長・花谷博幸

 

はなたに・ひろゆき――昭和46年埼玉県生まれ。鍼灸師。高校卒業後、中国・山西省の人民病院に三年間留学し中医学を学ぶ。帰国後、専門学校卒業、学術研究を続けながら、1992年バランス研究所、バランス整骨院を開業。著書に『肩を回せばねこ背は治る!』(マキノ出版)など多数。業界最大規模の研修会を主宰。

 

 

■コロナ禍がもたらした

 体の変調

 コロナ禍が始まって半年くらい経った二〇二〇年の夏頃からでしょうか、私が営む整骨院に来院される患者さんの体に、これまでにない異変を感じるようになりました。

 通常、肩こりといえば、ほとんどが肩の後ろのほうに凝りや痛みが出るものですが、なぜか肩の横や前のあたりに異常なコリがある方が急増したのです。同時に、頭痛や顎痛、難聴やめまいなどの耳の異常、睡眠障害に悩まされて相談に見える方も増えてきました。

 そういう患者さんの体を診ると、ほぼ全員が首の前面の筋肉・斜角筋が異常に緊張していました。私はすぐに、この現象はコロナ禍が深く関わっていることに思い至りました。

 当時は、コロナウイルスのことがいまほどよく分かっていませんでした。ワクチン接種をはじめとする予防体制も十分整っていない中で、感染者は増え続け、命を落とされる方も相次いでいる。突然現れた未知の病気に対する恐怖心が、人々の心身に大きなストレスをもたらしていたのです。

 このストレスに拍車をかけたのが、感染予防のために着用することになったマスクでした。

 大半の方々にとってマスクは、風邪や花粉症などに対処するために一時的に着用するものでしかありませんでした。ところがコロナ禍以降、私たちはマスクを常時着用する新しい生活を余儀なくされたのです。

 ネクタイを締めたり、きつめの洋服を着たりすると体は緊張するものですが、これはマスクをする際も同様です。両耳にゴムを掛けて顔をピッタリ覆うことで、無自覚のうちに体の皮膚感覚には緊張が生じるのです。

 先述した、首前面の筋肉・斜角筋の緊張に伴う体の様々な不調は、ストレスによって歯をギリギリと噛み締めたり、グッと食いしばったりする悪癖を持つ人に現れる典型的な症状です。

 未知の病気に対する恐怖心と、長時間のマスク着用。この二つのストレスが重なることで、多くの人が無意識のうちにこうした悪癖に陥り、体に変調を来してしまったようです。

 危機感を覚えた私は、この症例を新たに「マスク病」と名付け、患者さんやメディアを通じて注意を促しています。

 

■悪い癖を

 見抜くには

 歯の噛み締め、食いしばりは、無意識に行っていることが多いため自覚しづらいものです。

 よくあるのが、パソコンに向かって仕事に没頭している最中。あるいは、家族から夜中の歯ぎしりを指摘されたことのある人も同様です。特に睡眠中は制御が利かなくなるため、自分が考える以上に強い力で噛み締めて体に大きな負担をかけてしまうことになります。

 顎や斜角筋は頭に近いため、噛み締めによって絶えず緊張を強いていると、脳もダメージを受けてしまいます。朝起きると疲れてる、いくら寝ても寝足りないといった人は、噛み締め、食いしばりを繰り返している可能性があり、注意が必要です。

 自分がそういう悪癖を持っているかどうか、簡単に確認する方法があります。こういう習慣のある人は、口の中、頬の内側を見てみると、うっすらと歯形が付いています。(チャート参照)

 ご家族や親しい方々の口の中をチェックしてみてください。口の中に歯形の付いた人は結構いるものです。

 

■簡単に実践できる

 マスク病対策

 それではここから、マスク病を解消するために、自分で簡単に実践できるケアの方法をご紹介しましょう。

 

①顎をマッサージする

 まずは、噛み締めや食いしばりで緊張した顎の緊張を、マッサージでほぐしましょう。

 顎の筋肉は、耳の下の顎の両側の先端から鼻の方向へ斜めに走っています。この部分に指を当て、筋肉の向きに沿って押し揉みします。仕事や家事の合間に、自分の心地良い強さで揉んで緊張を解きほぐしましょう。10往復を3回/日(イラスト参照)

 

②マグネシウムオイルを塗る

 これに加えて、マグネシウムオイルを塗布することをお勧めします。

 マグネシウムオイルは、筋肉を軟らかくする効果があり、筋肉痛の時に塗ると、痛みの緩和に大きな効果があります。顎の緊張を軽減する上でも効果的ですので、顎の関節の周辺に塗るとよいでしょう。

 マグネシウムオイルは、ネットで市販されており、価格もそれほど高くないので、簡単に手に入れることができます。

 

③口の形を工夫する

 顎に力が入りにくい口の形というものがあります。

 舌先を前歯の後ろや、上顎に軽く着けた状態で顎に力を入れてみてください。力が入らないと思います。普段から、舌先を前歯の後ろや上顎に軽く着けておくことを習慣にすると、顎を余計に緊張させなくて済みます。

 もう一つ、「う」という言葉を発する時のように、口を軽くすぼめた状態も、顎に力が入りにくくなります。歯を食いしばっていることに気がついたら、口をいったん「う」の形にすぼめてリセットしましょう。

 平素から、こうした舌の位置、口の形を意識することによって、噛み締めや食いしばりの悪癖を軽減させることができるのです。

 

④マウスピースを装着する

 あいにく睡眠中は、自分で意識して顎の緊張をコントロールすることができません。しかし、睡眠中の食いしばりや歯ぎしりを放置しておくと、大事な歯や歯茎を痛め、時には損傷してしまうこともあります。

 これを防ぐためには、睡眠中にマウスピースを装着するとよいでしょう。

 自分の口の形に合ったマウスピースのほうがより有効ですから、歯科医院で歯型を取ってもらい、自分の口の形にしっかりフィットする専用のマウスピースを使用することをお勧めします。

 ただし、マウスピースによって顎の緊張を解くことはできません。あくまでも、噛み締めによって歯と歯茎がダメージを受けるのを防ぐ措置であることをご理解ください。

 

⑤不要な時にはマスクを外す

 一人で車を運転している最中に、マスクを着けている方をよく見かけます。しかし、そうした感染リスクのないところではなるべくマスクを外して、体をリラックスさせる時間を少しでも多く確保することが大事です。人と会う時など、装着すべき時はきちんと装着し、そうでない時には外す。オンとオフのメリハリをしっかりつけることが大切です。

 なお、睡眠中もなるべくマスクの着用は避けたほうが無難です。鼻や喉の保湿を図ったり、埃を避けたりする上では有効ですが、リラックスして質の高い睡眠をとるためにも、マスクの代わりに空気清浄機や加湿器を使用することをお勧めします。

 

 こうした対策に加えて、平素からしっかりストレスを発散することを心掛けましょう。

 多くの方が指摘されているように、外での行動が制限されるいまだからこそ、家族と過ごす時間を大切にしたり、自宅でできる新しい趣味に挑戦したりして、日々の生活の中に喜びを見出す工夫をすることは、マスク病の最も根本的な対策であるとも言えるでしょう。

 

■アフターコロナを

 見据えた準備を

 長引くコロナ禍によって、私たちの生活は大きく変わりました。マスクの着用ばかりでなく、アルコールを用いた手指の頻繁な消毒等々、かつては考えられなかったほど極端に清潔を求める生活が普通になりました。

 現時点では致し方のないことですが、もしこの状況が今後も長く続くようであれば、マスク病以上に深刻な健康上の問題が生じるのではないかと私は危惧しています。

 人間は原初以来、雑菌やウイルス、バクテリアと共に生きてきました。人間の体は本来、これらと共生することで維持できているといえます。しかし、現在のように菌やウイルスを徹底して排除する状態が長く続けば、人間の体はバランスを崩し、弱体化して、新たに想定外の健康上のトラブルが起こる可能性があります。

 たまには風邪をひくことによって、逆に免疫力は高まります。また、子供が外で泥遊びをすることで、抵抗力が養われる面もあります。コロナ禍によって人の意識も変わり、かつては普通であったことが非常識と取られるようになりましたが、人間にとってはかなり不自然な状況といえます。

 幸い、コロナに有効な治療薬が間もなく投入される見通しが立ってきました。コロナがこれまでのように恐い感染症でなくなり、人類が一刻も早くこの異常事態から脱却できることを祈るばかりです。

 その間に私たちが為すべきことは、引き続き感染対策に努めて極力コロナに罹患しないように努めると共に、コロナ収束後の人生、アフターコロナの生き方についていまから真剣に考え、その準備を進めておくことです。出口戦略は政府や自治体ばかりでなく、私たち一人ひとりにも求められているのです。

 社会には、きっとまた大きな変化が訪れるでしょう。しかし、譬えどんな状況になっても、読者の皆さんが各々の道をしっかり切り開いていかれること。そしてその基盤となる健康な心身を維持していかれることを願ってやみません。

 

 

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